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特許情報から見えてきたLanda Nanographic Printing

Future beyond Digital printing 目次

  1. Future beyond Digital Printingについて
  2. ジョブズの印刷業界に与えた影響
  3. PCプリンターの歴史
  4. インターフェースについて
  5. どうなって行くのか、印刷展示会の将来は?
  6. デジタルプリンティングのルーツを探る
  7. インクジェット技術と製品の歴史(drupa2008以前)
  8. インクジェット技術と製品の歴史(drupa2008以降)-連続噴射型編
  9. ナノテクノロジーとナノグラフィック・プリンティング
  10. 特許情報から見えてきたLanda Nanographic Printing
  11. RICOH Pro VC60000に見るリコーPP製品事業戦略
  12. 新市場を創造するインクジェットプレスXerox Rialto 900 Inkjet Press

特許情報から見えてきたLanda Nanographic Printing

秋のイベントシーズンに入って、富士ゼロックス、リコーやSCREEN他から印刷業務用プロダクションプリンターの新製品発表が行われています。また印刷機材メーカー主催のプライベートショーやJAGAT、画像学会、印刷学会主催の技術セミナーなどが開催されましたが、筆者が複数のセミナーに参加した中でも最も重視し興味を持って参加したのは、10月10日に開催された印刷学会主催のセミナー「破壊的イノベーションの予兆をとらえよう」でした。その理由は小森コーポレーションのプレゼンテーマが「ベールに包まれていたランダNanographyの進展は」というもので、そのプレゼンテーション内容の紹介や感想は後程触れます。

最近になってNanographic Printing プロセス関連の公開特許情報が見つかりだしたので、重点的に調査を始めているところです。特許に詳しい人は良くご存知ですが、重要で将来性のある特許に関しては同業他社が総力をあげて潰しにかかります。インクジェット技術はすでに100年以上の歴史が有りますし、その中でもコア技術はプリントヘッドとインクです。1990年以降キヤノン、エプソン、HPなどがピエゾ方式とバブルジェット(サーマルジェット)方式のパーソナル・インクジェットプリンターの開発生産に拍車をかけながら、特許出願に関してもしのぎを削っていた時期は膨大な量の特許出願と権利取得していますので、どんなに独創的なアイデアでもすんなりと権利化できるほど甘くはありません。ちょっと古い資料ですが、平成16年に特許庁がまとめた「特許出願技術動向調査報告書 インクジェット用インク」の中から抜粋した2つのグラフ「特許出願上位企業と出願件数」と「水性顔料インク関連の特許出願件数の推移」を参考の為に載せます。

ベールに包まれていたランダNanographyの進展は?

前述した様に10月10日に行われた印刷学会主催セミナー「破壊的イノベーションの予兆をとらえよう」で、小森コーポレーションの吉川氏が見出しにあるテーマでLandaに関するプレゼンをされましたが、その内容に関するポイントを述べてみます。Benny LandaはIndigoを2003年にHPに売却した資金でLanda Group(Landa Digital Printing:デジタルプリント技術の開発会社、Landa Labs:研究所、 Landa Ventures:ベンチャーキャピタル、Landa Fund:財団)を立ち上げました。これらグループ企業が協力して作り上げたのがNanographic Printing プロセスだそうです。drupa 2012のLandaブースには約10万人が訪れ、合計70回のLandaシアターでのプレゼンには4万人もの来場があったそうです。筆者もdrupa 2012には視察に行っており、滞在期間中は数えきれないぐらいLandaブースに通いましたので、前記の情報も納得出来るものでした。また、プレスセミナーではプレゼンテーションエリアの最前列に陣取り、Benny Landaの説明の一言一句を聞き逃すまいとしていました。

Benny Landaと筆者
盛況だったプレスコンファレンス

吉川氏の説明を要約すると、Nanographic Printing プロセスはナノレベルサイズの顔料(1ナノメートル=1/10億メートル)からなるナノインクをブランケット上に数十億滴射出し、イメージを形成(インク層厚さ約500ナノメートル)する為に乾燥し、その後イメージを被印刷対に転写する技術で、その特徴は以下の通りだそうです。drupa 2012の時の内容と微妙に違いは有りますが、大筋ではほぼ同じと理解しました。

  • 広い色再現領域
  • 高い光学的濃度
  • シャープな輪郭
  • 均一な光沢
  • 環境に優しい
  • 全頁バリアブル可能
  • 高い印刷速度
  • どんな紙、プラスティックにも印刷可能
  • デジタル印刷最低コスト

他にも新しい資料での説明がありましたのでご紹介いたします。水性インクジェットとNanographyの比較をした資料ですが、当日はPDF資料が無かったので同じ内容で筆者が入手したイラストを使って説明します。

水性インクジェット  対  Nanography

水性インクジェット

  • インクは直接紙に射出
  • インクの水分等が紙に浸透
  • 吸収性のある被印刷体が必要
  • 乾燥に多大なエネルギー必要
  • 使用領域が限られる

Nanography

  • Nanoinkはブランケットに射出
  • 乾燥されたイメージが紙に転写
  • どのような被印刷体でも転写可能
  • 効率の良い乾燥方法
  • 使用領域に限定が無い

Nanography関連特許に関して

Landa社に関する特許情報を見つけたのがつい最近の事なので、充分に集めきれていない事や翻訳して内容を理解するのに膨大な時間を要するので、詳細に関してはまとまった形でレポート化したいと考えています。また、HPがナノレベルのインク関連技術を出願するのは当たり前だと思っていましたが、何と三菱重工までが”Ink jet sheet-fed offset press”なる特許出願をしていたのを見て、改めて東京機械だってどんどんデジタル化を進めているのに、三菱重工がデジタル印刷機を作らない訳が無いと考えた次第です。

本題のLanda社のNanoinkに関する特許ですが、Land Labsが出来た2003年の数年後から出願が始まっているようです。特許の内容的にはインクに含まれる顔料粒子径がナノレベルになると、ニュートン力学では説明しがたい挙動(ファンデルワールス力の発生など)を示すことがある事を利用すると記載してあります。具体的にはファンデルワールス吸着を起こさせる幾つかの条件をプロセスとして達成すれば、プリントヘッドから飛翔したインク滴がある程度の温度(150℃以下)にコントロールされたブランケット上で500nm前後のインク層を形成するかもしれません。また、ブランケットから500nm前後のインク層を剥離し被印刷体に転写するには、インク層とブランケットの間で働いていた分子間引力を無くす、即ち静電気力や表面張力変化などの複合要素を変化させる、など可能性は十分考えられます。筆者は化学にはうといので、公開されている特許資料の化学式やインクに含まれる溶媒、添加物、顔料と含有量に関しては触れない事とします。

以下に出願されたNanographic Printing プロセス関連特許の図面の一部を載せて、特許説明文から分かる範囲で意訳して説明しますが、短時間で読んだだけなのでミスがあった場合はご容赦ください。図1は枚葉方式の全体構造、図2はブランケット駆動機構で、インク射出機構300には4から8個のインクジェットヘッド302が有り、サーバーより送られてきたイメージデータに基づいてインクドロップをブランケット130上に射出します。ブランケット130は150℃前後に温度管理されていますので、インク中の水分は瞬時に蒸発しますが、ブランケット130の上面にはヒーター107が設けられており、インク層を被印刷体501に転写するに最適な温度にコントロールします。被印刷体501は給紙機構506から給紙ローラー520を介してアシストローラー502と加圧ローラー140の間に来ると、ブランケット130上のインク層が被印刷体501上に転写し画像が形成されます。画像が転写された被印刷体501は、くわえロール524を介して給紙ローラー526から第2のアシストローラー504と加圧ローラー142の間に送られていきます。筆者が考えるに、この構造は両面プリント用では無く高速プリント用の構造だと判断しました。即ち、2カ所のインク層転写部で奇数頁、偶数頁の被印刷体にインク層を転写する事で高速化を図るのです。

図1
図2

今後もLandaに限らず継続的に各社の製品に関する特許を調査し、それら製品の技術レベルや性能に関して正しい情報を発信していくつもりです。

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