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RICOH Pro VC60000に見るリコーPP製品事業戦略

Future beyond Digital printing 目次

  1. Future beyond Digital Printingについて
  2. ジョブズの印刷業界に与えた影響
  3. PCプリンターの歴史
  4. インターフェースについて
  5. どうなって行くのか、印刷展示会の将来は?
  6. デジタルプリンティングのルーツを探る
  7. インクジェット技術と製品の歴史(drupa2008以前)
  8. インクジェット技術と製品の歴史(drupa2008以降)-連続噴射型編
  9. ナノテクノロジーとナノグラフィック・プリンティング
  10. 特許情報から見えてきたLanda Nanographic Printing
  11. RICOH Pro VC60000に見るリコーPP製品事業戦略
  12. 新市場を創造するインクジェットプレスXerox Rialto 900 Inkjet Press

RICOH Pro VC60000に見るリコーPP製品事業戦略

少し前の話になるが、昨年の9月24日にリコーから「RICOH Pro VC60000」が、翌日の9月25日には大日本スクリーン製造から「Trupress Jet520HD」が発表された。現時点では詳細仕様が発表されていないので断定は出来ないが、この2モデルともロール紙供給・巻取などの事前事後処理装置を除き、ほぼ同じ本体構造と思われる。リコーと大日本スクリーン製造との協業関係は、2007年3月に発足したインフォプリント・ソリューションズ(リコーとIBMの合弁会社、2011年10月にリコーグループに統合)との関係から始まっている。衆知とは思うが、インフォプリント・ソリューションズの主力製品である高速連帳インクジェットプリンターInfoPrint 5000シリーズは大日本スクリーン製造のTrupress Jet520のOEM製品である。また、InfoPrint 5000が2007年に欧米を中心に販売開始された当時は、競合製品(ピエゾオンデマンド・インクジェット方式の製品)がほとんど無い状態で、5年以上はトップシェアを続ける事が出来た結果、InfoPrint 5000とTrupress Jet520の両シリーズの全世界での稼働台数は700台以上になっている。

InfoPrint 5000 (drupe 2012)

上述した様な実績を元に、リコーと大日本スクリーン製造が共同開発したRICOH Pro VC60000/ Trupress Jet520HDとはどんな製品で特長はどこに有るのか、メーカー発表資料や画像、動画など、入手可能な情報を元に解説する。

RICOH Pro VC60000の概要

2014年9月24日のニュースリリースに記載された内容から見えてくる製品コンセプトは、「基幹業務から商用ニーズまでに対応」で、従来機(InfoPrint 5000、Trupress Jet520)から改善された点は、高画質化と用紙対応力である。すなわち、各種伝票・帳票などの企業内集中印刷、見積書・請求書などの基幹業務印刷、ダイレクトメール・トランスプロモなどのダイレクトマーケティング印刷からPOD・BODなどの少部数印刷分野まで、一つのシステムで幅広い用途に対応可能と紹介している。以下にRICOH Pro VC60000の基本仕様と外観写真を掲載する。

  • RICOH Pro VC60000基本仕様
    • 解像度:1200dpi × 1200dpi
           600dpi ×  600dpi
    • 印刷速度:120m/分(解像度600dpiの時)
           50m/分(解像度1200dpiの時)
RICOH Pro VC60000

ニュースリリースの外観写真から全体構成を解説すると、右端からアンワインダー(ロール紙供給装置)、アンダーコートユニット、表面プリント用本体、ターンバー(用紙反転機構、見えない)、裏面プリント用本体、リワインダー(ロール紙巻取装置)の順に並んでいる。ニュースリリースでは説明されていなかったが、アンダーコートユニットはオフセット印刷用コート紙などインクジェット適性の無い印刷用紙に対して、アンカー剤を事前塗布する事を目的としたオプションユニットである。

大日本スクリーン製造のTrupress Jet520HDのニュースリリースには基本仕様は記載されていなかったが、特徴として「独自の検査装置であるJetInspectionを搭載」との記載がある。

Trupress Jet520HD

写真から見たRICOH Pro VC60000との相違点は、Trupress Jet520HDのアンワインダーとリワインダーがHunkeler製である事と、プレコートユニットが無い事であるが、実際の製品構成としては両モデルとも共通性を維持するであろう。

搭載されているインクジェットヘッドについて

RICOH Pro VC60000とInfoPrint 5000シリーズの最大の違いは、インクジェットヘッドがエプソン製からリコー製に変わったことである。リコーのインクジェットプリンター製品としてはジェルジェット方式のビジネスプリンターや複合機が販売されているが、それらの製品に使われているピエゾオンデマンド・インクジェットヘッドはリコー製である。リコーのインクジェット技術のルーツに関する詳しい説明はここでは割愛するが、その歴史は30年以上の長きにわたっており、インクジェットヘッドのOEM販売の実績は確かなものがある。インクジェットヘッドを自前とする事で、インクも自前に出来るという事になり、InfoPrint 5000シリーズで大きな課題であったエプソン製インクによるランニングコストの制約のタガが外れる事となる。

リコー製インクジェットヘッド

すでに公開されている情報から推測すると、搭載されているインクジェットヘッドは印刷幅2.13インチ(54.1mm)でノズル数1280個(320×4列)と思われる。このヘッドを1個/1色で使えば600dpiでプリント可能となり、2個/1色で1/1200インチ(0.02mm)ずらして使えば1200dpiプリントが可能となる。以下の写真はヘッドアッセンブリーをノズル側(用紙側)から撮影した物で、1色につき20個のインクジェットヘッドが並んでいるので1200dpi対応のものだと考えられる。

ノズル側から見たヘッドアッセンブリー

全体構成の詳細

RICOH Pro VC60000の本体構成の詳細を以下の断面イラストを元に説明して行く事とする。図中のグレー部分はオプションで、アンワインダー(図示せず)と表面プリント用本体の間にはアンダーコートユニットが設置可能である。また、Yユニットの左側に有る予備のユニットの最後の部分に、プロテクターコートユニットが追加可能となっており、プロテクターコート処理(インクジェットヘッドからコート液を吹き付ける?)を行う事で、印刷面のスメア対策や耐擦性の向上が達成される。

RICOH Pro VC60000 断面イラスト

本体の最終ユニットはインクドライヤーユニットである。InfoPrint 5000シリーズでは2つのヒートローラーにプリント後の用紙の裏と表を接触させインクを乾燥させる方式であった為に、インクカバレージの高い画像などでは乾燥しきらないインクがヒートローラーから印刷用紙に逆転写するという問題が有った。前記問題を教訓にして設計されたRICOH Pro VC60000のインクドライヤーユニットの構造は、印刷裏面は従来通りヒートローラーでの接触乾燥で、印刷表面は5台の熱風発生器による非接触乾燥にする事で従来問題を解決している。

インクドライヤーユニット

DFE(デジタルフロントエンド)とTotalFlowについて

リコーはRICOH Pro VC60000の発売を機に、オープンスタンダードのアーキテクチャーをサポートした複数のプリントストリームを発表した。その内容は業界標準であるPS, PDF, PDF/VT, AFP/IPDSとJDF/JMFである。そして独自のコアテクノロジーであるレガシーAFP/IPDSフォーマットとともにAdobe PDF Print Engineも採用する事で、前述の様なソリューションを提供可能としている。また、TotalFlowに関しては充分な情報が無い状態ではあるが、KodakのPrinergy, XeroxのFreeFlowといった相互乗り入れのプラットフォームでは無いように思える。各社各様の考え方で進むことは結構な事ではあるが、常に顧客視点を忘れないようにして欲しいものである。

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