Future beyond Digital printing 目次
- Future beyond Digital Printingについて
- ジョブズの印刷業界に与えた影響
- PCプリンターの歴史
- インターフェースについて
- どうなって行くのか、印刷展示会の将来は?
- デジタルプリンティングのルーツを探る
- インクジェット技術と製品の歴史(drupa2008以前)
- インクジェット技術と製品の歴史(drupa2008以降)-連続噴射型編
- ナノテクノロジーとナノグラフィック・プリンティング
- 特許情報から見えてきたLanda Nanographic Printing
- RICOH Pro VC60000に見るリコーPP製品事業戦略
- 新市場を創造するインクジェットプレスXerox Rialto 900 Inkjet Press
デジタルプリンティングのルーツを探る
本連載の3月号でPCプリンターの歴史について触れましたが、ほぼ時代を同じくしてインパクト方式又は電子写真方式の基幹業務用プリンターも普及発展してきました。ここ数年の間で急速に普及してきた印刷業務用デジタルプリンター/プレスのルーツを理解する上での参考になりますので、今回は基幹業務用プリンターの歴史と現在についてご紹介してみようと思います。
基幹業務とは、すべての企業活動の中心となる販売管理、生産管理、会計、人事、給与などの業務を指します。また、これらの業務を行うシステムを基幹系システムと言い、従来はIBM、富士通やNEC等の汎用大型コンピュータ上でシステムを構築することが多かったのですが、現在ではSAPなどが提供するERPパッケージ(Enterprise Resource Planning)と呼ばれるパッケージソフトをカスタマイズして、PCサーバー上で運用することが多くなってきました。
上述しましたような基幹業務に使われるのが基幹業務用プリンターですから、ほとんどが大企業や中堅企業のオフィス内で稼働していますので、一般の人々が目にする事はほとんどありません。基幹業務の歴史を語る上でIBMは欠かせない存在ですので、IBMの基幹業務用プリンターの歴史をまずはご紹介する事にいたしましょう。
IBMの基幹業務用プリンターの歴史と現在
IBM 1403ラインプリンターは、IBM 1401コンピュータシステムと共に1959年に発売された世界で最初の基幹業務用プリンターです。プリント方式は活字ラインプリント方式といって、活版印刷に使うのと同じような活字48個(アルファベット26文字+10個の数字と12個の特殊文字)を5倍の240個がチェーン状につながっている活字チェーンを高速で走査し、対向部分にはプリント幅(標準で132文字)相当の132個の打撃ハンマーを並べてあります。活字ベルトと打撃ハンマーの間にはインクリボンとファンフォールド紙が通過するようになっていて、用紙送り命令とプリント命令をコンピュータから受け取ると、その情報に基づいて毎分600行(1行は1/6インチ)でプリントを行います。
IBM 1403シリーズは次世代製品のIBM 3800 Laser beam Printerが登場する1976年までの15年以上の間、IBM業務用プリンターの主力製品として活躍し、IBM 3800シリーズ製品の発売以降も長期間にわたり中速機シリーズとして活躍し続けました。
1976年に発売されたIBM 3800はプリント方式に電子写真方式を採用し、紙搬送はファンフォールド連続紙でした。この製品の解像度は180×144dpi(Dot per Inch)でプリント速度は毎分20,000行(約85m/分)でIBM 1403の約33倍の速度でまで高速化されていました。製品シリーズとしてはModel 001(1975年4月15日発表)、Model 002(1979年に発表、漢字サポート製品)からModel 006/008(1987年)までのラインアップが発売され、次世製品3900シリーズが1990年に発表されるまで続きました。
IBM 3900からはIBMは開発主体をソフトウエアに置く事にして、エンジン本体は日立製作所からOEM供給を受ける事にしました。IBM 3900とほぼ同時に発表された高速トランザクションデータ処理用のPDLがAFP(Advanced Function Presentation)であり、一体的に使われるデータストリームがIPDS(Intelligent Printer Data Stream)です。AFP/IPDSは世界中の基幹業務用出力ワークフローとして使われるデファクトスタンダードであり、後述する基幹業務用プリンターメーカー各社もサポートしています。
IBMは帳票プリントのカラー化を目指して2000年に電子写真方式のIBM Infoprint Color 130 Plusを発売し、2007年にはインクジェット方式のInfoPrint 5000を発売しました。しかし皮肉なことに、ほぼ同時期の2007年6月にIBMの基幹業務用プリンター事業を分離し、リコーとの合弁会社InfoPrint Solutions Companyを設立しました。そして、7年を経た今年になって完全にリコーの一部門となりました。
SAPによる基幹業務用プリントの事例
SAPはマイクロソフト、オラクル、IBMに次ぐ世界第4位のソフトウエア企業ですが、主力製品はERPに代表される基幹業務用アプリケーションであり、日本でも多くの大企業から中堅企業までのユーザーを抱えています。以下にSAPのAFP/IPDSプリントソリューションを例示すますが、出力用プリンターのインターフェースはIPDSをサポートしており、プリンタードライバーなどのDEF(Digital Front End)が整備されていればプリンター機種には依存しないソリューションとなっています。
基幹業務用プリンターの用紙搬送方式による分類
基幹業務用プリンターの用紙搬送方法には大別して、連続紙方式とカットシート方式に分けられます。更に連続紙方式にはファンフォールド紙方式とロール紙方式があります。ファンフォールド紙(fanfold Paper)とは用紙両端に用紙送り穴が等間隔で空いており、扇(Fan)状に折り畳まれた連続紙のことで、一般名称でストックフォーム(日本語俗称を箱紙)とも言います。
前述しましたIBM 1403はファンフォールド紙専用機でしたが、IBM 3800等の電子写真方式の製品はファンフォールド紙とロール紙のどちらでも使用可能となっており、事前にミシン目や送り穴をロール紙に加工しておくと、供給した用紙がプリント後はファンフォールド紙状態に折り畳まれて出てくるようにすることも可能です。昨年のJGAS2013で展示されていたCanon/Oceの新製品でColorStream 3000 Zの特徴の一つがロール紙プリンターに追加オプションとして準備されたファンフォールド対応機能でした。
基幹業務用プリンターの用紙搬送方法のもう一つはカットシート方式ですが、ほとんどの製品が電子写真方式で画像形成部、カットシートの搬送部とコントローラー部などのハードウエアは、オフィスユースプリンターとほとんど同じ、製品によっては完全に同じ場合もあります。以下に各社の代表的なカットシートプリンター製品の一例を図示します。