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インクジェット技術と製品の歴史(drupa2008以前)

Future beyond Digital printing 目次

  1. Future beyond Digital Printingについて
  2. ジョブズの印刷業界に与えた影響
  3. PCプリンターの歴史
  4. インターフェースについて
  5. どうなって行くのか、印刷展示会の将来は?
  6. デジタルプリンティングのルーツを探る
  7. インクジェット技術と製品の歴史(drupa2008以前)
  8. インクジェット技術と製品の歴史(drupa2008以降)-連続噴射型編
  9. ナノテクノロジーとナノグラフィック・プリンティング
  10. 特許情報から見えてきたLanda Nanographic Printing
  11. RICOH Pro VC60000に見るリコーPP製品事業戦略
  12. 新市場を創造するインクジェットプレスXerox Rialto 900 Inkjet Press

インクジェット技術と製品の歴史(drupa2008以前)

連帳プリンターのプリント速度は50~300メートル/毎分程度ですが、高速領域の製品のプリント方式はインクジェット方式に絞られます。インクジェット方式のインク吐出原理には大きく分けて連続噴射型とオンデマンド型とがありますが、両方式の吐出原理を身近に有る現象になぞらえて説明してみましょう。

連続噴射型の吐出原理は、ビニールホースで水まきをする時にホースの先端を指先で絞ったり、小刻みに振ると飛び出す水が拡散して霧状なったり、水勢が増すことに似ています。

ホースから飛出す水滴

連続噴射型インクジェットには様々な方式が有りますが、コダック(元のバーサマーク)が採用しているのは偏向制御方式といって、高圧に加圧されたインクに吐出ノズル部分の共振部で振動を加えることでインクを小液滴化させて飛び出させ、インク液滴が飛翔してプリント対象物に到達するまでの間に、インク液滴飛翔方向を制御するチャージ電極と高電圧偏向板があります。プリント対象物に画像や文字を形成する為に必要なインク液滴は真直ぐ飛ばし、不要なインク液滴は高電圧偏向版によりガター方向に曲げて飛ばすことでプリント対象物には到達せず、インク回収部に送られ再利用されます。連続噴射方式のインク吐出周波数は100~200KHzと非常に高いのが特徴です。

連続噴射型偏向制御方式

また、オンデマンド型の一種で広く使われていますピエゾ・オンデマンド方式の吐出原理は子供向け科学実験で使われる「空気砲」に似ています。空気砲は段ボールなどで作られた一カ所に丸い穴が開いている箱の中に煙を充満させておき、箱のどこかを叩くと箱の容積が急激に小さくなることで煙が押し出されて飛んでいきます。

空気砲

ピエゾ・オンデマンド方式の構造はインクの入り口(インク供給口)、インクが溜まっている部屋(インク室)、インク液室を叩くピエゾ素子とインクの出口(ノズル)からなっており、空気砲の段ボールを叩くのと同じようにインク室をピエゾ素子で叩きインク室容積を急激に小さくすることで、インクをノズルから飛び出させます。

ピエゾ・オンデマンド方式

また、HPやキヤノンのサーマル(バブルジェット)インクジェット方式は、インク液室内に設けたヒーターを急激に加熱し気泡を作りインク液室を狭くすることで、インクをノズルから飛び出させる方法をとっています。オンデマンド方式のインク滴吐出周波数は、インク液室前後の容積、インク粘度やインク流路の摩擦抵抗によって決まりますが、一般的には10~50KHと言われています。

以下に連続噴射型偏向制御方式とピエゾ・オンデマンド方式の各方式を使った技術と製品の歴史を紹介していきたいと思います。

黎明期のインクジェット技術と製品

インクジェット技術の特許を調べてみると世界で最初に出願されたものは1ノズルの連続噴射型の原型となるもので、1867年にイギリス人のケルビンが発明したとなっています。その約100年後の1970年前後になりますと日本国内ではカシオやシャープがテレタイプや日本語ワープロの出力用として、1ノズル方式の連続噴射型インクジェットプリンターを発売しました。また海外では米国のMead社が複数ノズルを持つ連続噴射型ヘッド搭載製品DIJITを1973年に発売しています。しかし、1970年代後半になりますとレーザービームプリンターがIBM、Xeroxやキヤノン等から発売され、連続噴射型インクジェットプリンターは紙へのプリンターとしては衰退していきます。しかし、缶や瓶などへのプリントなど産業用用途としては主流として使われ続けて現在に至っています。

一方、オンデマンド型のインクジェット技術は連続噴射型に遅れること約80年後の1946年に、ピエゾ・オンデマンド方式の特許出願がなされています。さらに30年後の1977年に世界最初のバブルインクジェット方式がキヤノンにより発明されました。時を同じくして1977年にはシーメンスから世界初のピエゾ・オンデマンドインクジェットプリンターが発売されています。1980年代後半になるとキヤノン、HPからサーマル(バブル)インクジェット方式プリンターが立て続けに発売され、1990年代後半からはエプソンもPM-700Cを発売し、本格的なカラーインクジェットプリンター時代を迎えることになります。

エプソンPM-700C

当時、インクジェット製品開発は世界中で行われていましたが、日本国内でもパナソニック(旧松下電工)やブラザー等、多くのメーカーが技術・製品開発を行っていましたが、ビジネスとして成功したのはキヤノンとエプソンの2社(国内シェア合計90%以上)だけでした。しかし、1990年から2010年までの約20年間のインクジェットプリンターはパーソナルユース(主に家庭用の)であり、画質やプリント速度は必要十分なレベルまで到達しており、本体の販売台数も頭打ちとなっているのが現実です。

プロダクションプリント用インクジェット製品(1990年~2007年まで)

前述したように1970年前後に登場した連続噴射型インクジェットプリンターは、プリント速度や画質面で制約があり広く普及する事無く衰退していきましたが、その中で生き残っていったのは唯一Meadの複数ノズル連続噴射方式技術でした。Meadは1983年にDiconix(Kodak子会社)に買収された後、Kodak(1988年)、Scitex(1993年)、Kodak(2003年)、Kodak IPS(2007年)と転々としました。その様な状況下でも複数ノズル連続噴射方式の技術と製品開発は続けられ、1991年にはKodak Versamark DS  printing systemの第一弾である1インチ幅で120dpi/240dpiの解像度、最高プリントスピード:300m/分の印刷システムを日本国内でも販売開始するに至りました。Kodakはその後、Versamark Dシリーズのラインアップを増やすとともにVT3000やVX5000シリーズを商品化してゆき、高速連帳プリンター市場ではトップシェアを誇るようになっていきました。

Kodak Versamark VX5000

また、プロダクションプリント分野の連続噴射型インクジェット技術はKodakだけが 採用していますが、その特徴は「プリントスピードは非常に速いが、プリント画質はオンデマンドには劣る」ことです。その理由は明確で、オンデマンド型のノズル-用紙間距離が1~2㎜であるのに対して、連続噴射型のそれは5㎜前後なのでインク飛翔中の外乱で用紙面でのインクドロップ着弾精度がドロップオンデマンド型より劣る為です。

一方、オンデマンド型インクジェット方式の高速連帳機としては、2003年にミヤコシがパナソニック(旧松下電工)製のヘッドを搭載したMJP-600を発表しました。また、2005年のPrint 05ではSCREENがエプソンヘッドを搭載したTruepress Jet 520を参考出品し、自社ブランドでの発売と共にIBM(当時)へもOEM供給(製品名InfoPrint 5000)する事でカラーインクジェット連帳プリンターの時代が始まる兆しを感じたものです。

そして、その予想が的中したのはdrupa 2008で、Oce Jetstream, Kodak Prosper Press, HP T300やFUJI Jet Press 720, SCREEN Truepress SX等多くのインクジェットプリンター/プレスが技術展示や製品発表をしていました。

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