• UPDATE

新市場を創造するインクジェットプレスXerox Rialto 900 Inkjet Press

Future beyond Digital printing 目次

  1. Future beyond Digital Printingについて
  2. ジョブズの印刷業界に与えた影響
  3. PCプリンターの歴史
  4. インターフェースについて
  5. どうなって行くのか、印刷展示会の将来は?
  6. デジタルプリンティングのルーツを探る
  7. インクジェット技術と製品の歴史(drupa2008以前)
  8. インクジェット技術と製品の歴史(drupa2008以降)-連続噴射型編
  9. ナノテクノロジーとナノグラフィック・プリンティング
  10. 特許情報から見えてきたLanda Nanographic Printing
  11. RICOH Pro VC60000に見るリコーPP製品事業戦略
  12. 新市場を創造するインクジェットプレスXerox Rialto 900 Inkjet Press

新市場を創造するインクジェットプレスXerox Rialto 900 Inkjet Press

2015年2月23日から26日の4日間に開催されたHunkeler Innovation daysにおいて、Xerox Rialto 900 Inkjet PressとCanon Oce VarioPrint i300の2モデルが発表されたことはご存知の方も多いと思う。2つの製品の基本構造や外観デザインは大きく異なるが、製品コンセプト、製品仕様に関してはほぼ同じであり、狙っている製品セグメントは電子写真方式カットシートプリンターと、インクジェット方式が主流の高速ロール紙プレスとの中間領域である。また、以下に記すような電子写真方式カットシートプリンターの持ついくつかの問題も同時に解決可能であるというのがメーカーの説明であった。

Xerox Rialto 900 Inkjet Press

デジタルプリンター/プレスの台数シェアで圧倒的に多いのが、電子写真方式カットシートプリンターである。しかし電子写真方式カットシートプリンターの抱えているいくつかの問題を挙げると、一部の例外を除くとプリントスピードはほとんどの製品がA4サイズで最高150枚/分程度であり、これ以上の高速化は望めない、また電子写真方式による印刷物の感触はオフセット印刷と比較すると違和感のあるトナーが原因の光沢がユーザーから敬遠されているが、何といっても最大の問題はランニングコストが高いという事であろう。

Hunkeler Innovation daysにおいて発表された2製品ともインクジェット方式ではあるが、用紙搬送系を含む全体構成が従来製品とは大きく異なっており、いくつかの革新的技術が採用されている。今回は紙面の都合上、Xerox Rialto 900 Inkjet Presに関して解説をするが、近い内にCanon Oce VarioPrint i300についての解説を行う予定である。

Xerox Rialto 900 Inkjet PressはXeroxが2013年2月に買収したIMPIKAが開発したGenesis Conceptを母体としている。筆者はdrupa2012でIMPIKAのプレスカンファレンスに参加して、プロトタイプとして発表されたGenesisConcepのプレスリリースを入手し、かつプレスカンファレンスの模様もビデオ撮影しておいた。それら情報からGenesisConcepに対するIMPIKAの思い入れを感じ取ったわけだが、Xeroxに買収されてもしっかりと製品化させた事はすばらしいことだと思っている。以下にGenesisのプレスリリース、プレスカンファレンスでの紹介と展示ブースでのプロトタイプデモを見た時の感想等を記す。

Genesis Conceptについて

無神論者の私は聖書の最初に出てくる言葉がGenesisであることをdrupa2012のIMPIKAプレスカンファレンスまでは全く知らなかった。プレスカンファレンスの最中に独英和電子辞典を使ってGenesisの日本語訳を調べると「旧約聖書:創世記、その他:起源、起こり」と出てきたので、試作機の仮称にしてもすごい名前を使うものだと感じたのを今でも覚えている。

IMPIKA Genesis Concept at drupa2012
  • Genesis Conceptのターゲット市場
    • Genesisソリューションは業務用複写機と大量印刷用産業用プリンターとの中間のマーケットを目標とする。
    • 成長している顧客は印刷業務の生産性の向上を求めているが、設置面積が小さい機械で、印刷物処理量はA4ページ換算で30万枚/月から200万枚/月の範囲にある。
    • この製品はトランザクションとダイレクトメールマーケットの相互乗入れによる市場拡大という新たなトレンドにマッチしている。
  • Genesis Conceptの基本仕様
    • プリント方式:インクジェット
    • プリントクオリティ:1000dpi以上、モノクロ、カラー
    • 用紙サイズ:A4、USレター
    • プリントスピード:160枚/分(片面又は両面)
    • 非常に競争力のあるプリントコスト
  • このソリューションは中規模の統合化プリントセンター(インボイス、健康保険、地方銀行やダイレクトメール等)の主流に必ずなるでしょう。また中少量生産や再印刷の為のその他のドキュメント・プリント・プロバイダーにとっても同様である。

以上がIMPIKAの考えた、インクジェット技術を使った市場創造型新製品のコンセプトと基本仕様である。それから約3年後にXeroxから正式発表されたRialto 900 Inkjet PressがGenesis Concept発表時との違いがほとんど無いという事は、IMPIKAのインクジェット製品に対する商品企画力がXeroxの上を行っていたと言うことに他ならない。

前述したように今年2月に開催されたHunkeler Innovation daysにおいて、Xerox Rialto 900 Inkjet Pressの正式発表と動体展示が行われた。また2月24日にはPress ReleaseとPDFカタログも出されたので、それらから要点を抜粋して解説していく。従来のインクジェットプロダクションプリンターは大きなプリントボリューム、大きな設置面積を必要とし、更には非常に高価格であったために印刷会社が導入するための大きな障害となっていた。これらの障害をブレークダウンする為にXerox Rialto 900 Inkjet Pressは開発されたと説明している。その為に、この製品は従来のインクジェット方式プレスの常識を覆す独創的な構造となっているので、以下に示すRialto 900内部構造断面図をもとに解説する。

Rialto 900内部構造断面図

各部名称と構造及び動作について

各部の名称はRialto 900内部構造断面図に記した番号に対応している。

  1. Integrated Web:内臓ロール紙
  2. Splicing table:ロール紙接続用テーブル
  3. Web Cleaner:ロール紙クリーナー
  4. Web Guide:ロール紙スキューコントローラー
  5. Print Heads (8):インクジェットプリントヘッド
  6. Missing Jet Detection Scanners:インク不吐出検出用スキャナー
  7. Peltier IR Dryers:ペルチェ効果式遠赤外線ドライヤー
  8. Chiller Rolls:冷却用ローラー群
  9. Xerox IMPIKA PDF or IPDS Controller options:オプションのPDF又はIPDSコントローラー
  10. Cutter with bleed edge trim:断ち落とし仕上げ用カッター
  11. Top Tray:上部トレイ
  12. High Capacity Stacker:大容量スタッカー

本体内部に交換可能にセットされた1.内臓ロール紙は、2.ロール紙接続用テーブルを通過して、3.ロール紙クリーナー部で汚れや紙粉を除去される。その後、4.ロール紙スキューコントローラーでロール紙の斜行補正を行う事で、ロール紙の横方向位置を所定の精度にコントロールし、印刷用紙の第一の面に5.インクジェットプリントヘッドにより所望の画像が形成される。印刷用紙上の画像を6.インク不吐出検出用スキャナーが読み取り、インク不吐出や着弾位置ズレの有無を検出する。ロール紙上のインクは7.ペルチェ効果式遠赤外線ドライヤーで乾燥された後、8.冷却用ローラー群を通過する間にほぼ常温となり第2の面に画像が形成され、第一の面同様のプロセスを経て、10.断ち落とし仕上げようカッターにより4面カットされ所定サイズ(A4,レターサイズ)にカットされ、11.上部トレイか12.大容量スタッカーに収納される。

代表的な特徴

上述した様に独創的な構造から生まれる特徴としては、

  • 世界で唯一の完全統合型ロール・トゥー・カットシート、幅狭ロール紙インクジェットプレスであり、月間プリントボリュームが150~500万インプレッション程度の印刷物製造業者向けにデザインされている。
  • 市場に出ているどのインクジェットプレスと比べても、最小の設置面積(58m ×1.55m)である。

基本仕様

  • テクノロジー
    • インクジェット:IMPIKA ドロップ・オン・デマンド ピエゾエレクトリック
    • ドロップボリューム:0, 4, 7, 11 pl (4 レベル グレイスケール)
    • プリント解像度:600 x 600 dpi x 2-bit
    • ビジュアル解像度:1000 x 1000 dpi
    • プリント速度:最大48 m/min, 320 impressions/min (A4 両面)
    • 推奨月間印刷枚数:150~500万枚/月
    • 印刷幅 :220mm
    • 印刷プロセス :シングルパス両面
  • インク:水性顔料インクHD(高濃度)
  • 用紙
    • 用紙種類:非塗工紙、非処理紙、インクジェット処理紙、インクジェット・マットコート紙
    • 用紙重量:60~160gsm
    • 用紙幅:250mm

以上解説してきたように、Xerox Rialto 900 Inkjet Pressは極めて独創的でチャレンジャブルな製品であることに間違いは無い。筆者は基幹系プリンティングシステムの分野にも関わってきたので、AFP/IPDSを用いた基幹系の企業内印刷部門が最も欲しかった製品であると確信している。この見解の結論は近い内に明確となってくるであろう。

関連記事

  1. ビットコイン(bitcoin)について

  2. バイオテクノロジーとその応用分野

  3. デジタルトランスフォーメーション関連用語の説明

  4. Versant 3100 (富士ゼロックス)

  5. RICOH Pro VC60000に見るリコーPP製品事業戦…

  6. 金融業関連用語の説明