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液体現像への期待

Oce InfiniStreamの液体現像ユニットの写真(Canon EXPO2015にて展示)

電子写真による高画質化、対オフセット印刷対応を考えた時、液体現像への流れが気にかかり、これは止められそうもない。電子写真における液体現像は1953年オーストラリア防衛庁技術研究所アデルート研究所のK.MetcalfeとR.Writeによって発明された。実用化当初より、現像速度が遅いことと、溶媒蒸気の処理に問題があり、多くの変遷を経る事となった。1965年リコーによる電子リコピーBS-1の発売を皮切りに種々の機種が市場へ投入されることとなったが、最も重要な出来事は1993年Indigo社によるエレクトロインクという液体トナーを使用したE-Print1000の発表である。カラー機であるにもかかわらず現像ローラは1本のみであり、トナー液供給ノズルから各色のトナーが順次切り換えられて100μm程度のギャップに供給される。エレクトロインクはトナーがトゲトゲの突起形状をしており、互いに絡み合ってトナー層を形成する。トナー径は1~3μmと液体トナーとしては大きめであるが、これにより電荷保持量を高め、現像の高速化を図っている。2000年Indigo社はUltrastream2000を発表。この機種からBinary Ink Development という現像システムが採用された。現在、Indigoの製品が液体現像機として最も広く使用されていることは間違いがない。その後の各社からの発表には次のようなものがある。

・2001年 東芝 REAL PROOF (IOI process)
・2003年 PFU KENROKU (高濃度高粘性液体トナー)
・2008年 ミヤコシ MD-Press1260 (低粘性不揮発トナー)

Oce InfiniStreamの液体現像ユニットの写真(Canon EXPO2015にて展示)

現在液体現像方式の持っている課題としては、次のようなものがある。

①高速高画質化 :トナーの高濃度化、微小ギャップ現像などが求められる。
②用紙対応性 :ブランケットドラムによる最適転写が必要。
③定着性 :トナー粒子からいかに素早く効率的にキャリア液を除去出来るかにかかっている。
④環境安定性 :現在はVOCの為処理装置が必要。無害な溶媒をキャリア液とする必要がある。

IGAS2015では新しい液体現像機が発表されるであろうと、大いに期待している。

ここまで述べてきたように、トナー機によるプロダクションプリンターは幾多の問題を乗り越え、今まさに飛躍しようとしている。

オフセット印刷に追いつき、それを越えるとき、真のPOD時代が始まることであろう。

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